「りんごを盗んだだと?」警部補は叫んだ。「今は2020年だぞ、エニッド・ブライトンの小説の中じゃあるまいし。」
「おっしゃる通りです。コックロフトの領地の裏の果樹園でブラッドリー・ワイルズを捕まえました。」警官は説明した。「管理人のターピン氏による通報がありました。」
「そうか、彼らの言い分を聞こうか。これ以上の裁判沙汰はコリゴリだからな…」
ワイルズとターピンは警察署内の拘置所に別々に入れられていた。
警部補と警官は、まずは管理人に話を聞きに行った。
ターピンは背が高く黒髪の男で、顔には深い皺が刻まれ、薄汚れたつなぎを着ていた。
「私は犬に餌をやりながら、家の鍵が全てかかっていることを確認していました。家の裏に回ると、何かが果樹園にいるのが見えました。走って近づいたのですが、暗がりの中では何もわからず、懐中電灯も家の中に置いてきてしまったのです。すぐに警察に電話をかけ、何も起こらないよう、果樹園のそばで待ちました。」
「ご協力に感謝します。」警部補は述べた。
「本件は単純な盗みのようですな。少年の言い分も聞いてみようじゃないか。」
2人は隣の部屋へと向かった。
ブラッドリー・ワイルズは16歳の少年で、ドアが開くなり不安げな様子を見せた。「俺は何もやってない!」少年は抗議した。「バス停で11番のバスをまってただけなんだ。バスは1時間に一本しかないんだ。20分ぐらい待ったところで、警察がやってきてバンに俺を無理やり乗せたんだ。俺は果樹園の中に入ってすらない!」
警部補は部屋を出ると、怒った様子で髭を引っ張る。
「どちらかは嘘をついている。」警部補は言った。
「事件を解決したんですか?」警官は訪ねる。
「いいや。どちらが嘘をついているのか、全くわからない。」警部補は答えた。
丁度いいところに、ケイス刑事が手洗いを使おうと、この小さな田舎の警察署に顔を出した。
「難問を立ち聞きしてしまいましたよ。2つの証言のうちの片方には、明らかな不一致がありますね。」
罪を犯しているのはどちらで、ケイス刑事が見つけた嘘は何だろうか?